平成26年2月19日~22日ベトナム出張の報告

平成26年2月19日(水)から2月22日(土)まで、当財団の武部勤代表理事・会長はベトナムを訪問した。以下、その概要を報告する。

2月19日(水)午前に日本を出発し、ホーチミン市に到着。午後、「KAIZEN吉田スクール」を訪問し,同校を運営するエスハイ社レ・ロンソン代表取締役と面会した。今夏に実習で北海道に派遣予定のベトナム人スクール生より、日本語での自己紹介や日本歌の合唱で出迎えを受けた。武部会長からは、実習での心構えとして「運・鈍・根」という日本語を紹介し、ベトナムの未来のため、実習の成果を期待すると激励した。その後、同代表の案内で、実習中の授業風景、オフィス内などを視察した。
「KAIZEN吉田スクール」は、日本企業向けの人材育成を目的とする日本語学校で、現在730名が学ぶ。将来は、午前1,000名、午後1,000名、夜1,000名の3,000名が学べる学校を目指している。日本政府が10年ぶりに再開した海外投融資の第一号案件としてJICAから融資を受け、2012年5月、ホーチミン市タンビン区に設置された。運営はエスハイ社。代表取締役のレ・ロンソン氏はホーチミン工科大学を卒業後、渡日。東京農工大学大学院修士課程修了。

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翌、2月20日(木)午前、この1月11日に開業したばかりの「イオンモール タンフーセラドン」を視察。イオン・ベトナム社西峠泰男社長より、ベトナム最大級のショッピングモールである同モールの運営管理状況について説明を受けた。また、ベトナムで急速に人気が高まっている寿司などの日本食や即食需要にも対応した「デリカコーナー」、産地直送の鮮度の高い野菜などを取りそろえた「スーパーマーケット」、映画館・ボーリング場などの「アミューズメントエリア」、美容健康・カルチャー教室といった「サービスエリア」などモール内を見学した。
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 その後、現地の水産加工会社SATRA(サチャ)社を訪問し、トラン・タイン・ナム取締役副社長と面会した。企業概要、事業活動の紹介が行われた後、武部会長より、「4月14日から北海道の年間売上100億円超の漁業組合長約10名がホーチミンを来訪予定であり、その際貴社の施設を視察したい。」と協力を求めたところ、快諾された。今後、東亜総研では「ベトナムとの橋渡し」として、現地視察や業務・資本提携、幹部・従業員研修なども応援する考え。

■SATRA(サチャ)社概要

社名:サイゴン商業公社(SATRA社)
 設立:1995年
 売上:42兆3100億ドン(2013年) ※売上・利益の年間平均成長率は10%~15%
従業員数:16,000人
本社:ホーチミン、日本事務所あり(横浜)
グループ会社:70社以上の子会社、提携会社、連営会社

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2月20日(木)午後からは、ビンズン新都市内の東部国際大学を訪問し、Michael Reardon学長、Tran Duc Vi副学長ほか大学関係者と面会し、大学の運営状況、カリキュラム内容などの説明を受けた。武部会長からは、「東急グループはじめビンズン省に進出している企業が求める高度な人材の確保は重要。同大学内では独越大学が間借りしていると聞いているが、日本のノウハウでも支援できることがたくさんあると思う。東京都市大学や亜細亜大学など関連を有する大学もあるので、一役買うことも可能ではないか。今後何かお手伝いできることがあれば、喜んで協力したい」との発言があった。
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その後、17時30分から、ビンズン新都市において開催されたビンズン省都移転セレモニーに列席した。グエン・タン・ズン首相や同省人民委員会レ・タン・クン委員長など政財界の要人が出席した。ビンズン新都市は、ホーチミン市から北に30kmにあるビンズン省のビンズン工業・都市・サービス複合地区に位置し、2020年には政府の「中央直轄市」となる予定。新都市内では、日本との合弁会社であるベカメックス東急社による「東急ビンズンガーデンシティ」のほか、政治行政センター(省庁舎)、ハイテクパーク、東部国際大学、インターナショナルスクール、商業金融センター、銀行、フードサービスエリア、オフィス、住宅(マンション、タウンハウス、戸建)などを中心に開発され、12万人が居住して、40万人が働く計画。交通渋滞と健康被害を避けるため、新たな公共交通システムとして、ベトナムで初めてバスが導入される。
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2月21日(金)午前、ベトナム教育訓練省を訪問し,ファン・ヴー・ルアン教育訓練大臣と面会した。日越大学構想は、現在、基礎的な調査を終え、設立について日越首脳間でも合意されている(2013年12月15日)。この日越大学設置に向け、JICAによる事業化調査(FS)実施へのベトナム政府からの協力をお願いした。ルアン教育訓練大臣から、「日越大学はベトナムの大学教育のニーズに合致し、両国の期待に適うものであり、全面的に支援する」、また、「本件は、ベトナムの将来にとって重要で,ベトナム共産党第8中央決議実施の上で核心的なものとなる。共産党中央決議の中では,教育訓練の刷新を行うこととなっているが,その一つになると認識している」との発言があった。
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昼には、グエン・スアン・ニャ国家大学ハノイ校(VNUハノイ)学長と懇談した。ニャ学長から,「日越大学構想を進めるには、日本側カウンターパート機関を選定した上で,VNUハノイとの間で協力覚書を締結することが必要。その協力覚書がなければ提案書をベトナム政府に送付することができず,政府が円借款を要請できない」との発言があり、武部会長から,「民間の資金協力を得るためにも早期の事業化調査の実施と,それに基づく円借款の要請が重要である」と同事業の推進を後押しすることを誓った。

午後、共産党本部にトー・フイ・ルア越日友好議連会長を訪問し、日越大学構想について意見交換した(深田博史日本大使も同席)。ルア会長より、「新年の節目にお会いできて嬉しい。日越大学構想については,越日友好議連としても個人としても支持している。今後,本件構想を具体的に展開するためには立法化が必要。その意味で,昨年12月に両国首脳間で合意ができたことは重要」とし、「越側関係機関も首相の決定に従って具体化を進めていくことになるが,越日友好議連としても積極的に支援していきたい。そのため,越日友好議連としても日越友好議連と同様に決議を出そうと考えている。(中略)我々として更なる協力を厭わない。日越大学構想は客観的に重要性があり,また両国首脳が合意した案件である。加えて,日越友好議連に貴特別顧問がおられるならば,必ずや成功すると確信している。」との発言があった。武部会長からは、「チュン・タン・サン国家主席訪日の際は,国賓としての歓迎に万全を期す」と約束したほか、「日越大学構想はサン国家主席,ズン首相,ルア会長によって第一歩を踏み出すことができた。皆さんが現職にいる間に大学院大学を発足したい。ルア会長のご尽力によって,日越大学はホアラックハイテクパーク(HHTP)に設立する方向性が明らかになった。ゆくゆくは医学やスポーツ学科等を加えて総合大学にしたい。多くの日本企業が進出する中,研究開発の拠点として日越大学構想は重点を置く必要がある。二階俊博日越友好議員連盟会長は,環境防災研究所を日越大学の下に作ってはどうかという考えをお持ちである。難しい問題はあるが,HHTPに設立できれば望ましい。大きな資金が必要となるが,今後,民間企業からの拠出や投資をどれだけ引き出せるかが鍵となる。」と述べ、「日越関係を戦略的パートナーシップから一段階進んだ信頼関係にしたい。」と更なる友好親善を進めることを誓った。
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その後、首相府にヴー・ドゥック・ダム越副首相を訪問し意見交換した(深田博史日本大使も同席)。ダム副首相は、1963年生まれの51歳と若く、2011年8月に政府官房長官(大臣級)に就任。昨年11月の国会で副首相に任命された、ベトナムの次代を担う人物。武部会長より,日越大学構想に対する協力要請に対しては、本件構想に対する支持とともに,問題が生じた場合は直接関与する旨の力強い支援を表明した。
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2月22日(土)午前、ファン・ドック・トゥーベトナム投資開発銀行(BIDV)代表取締役CEOが宿泊先のホテルを訪れ、武部会長と面談した。トゥーCEOから、ベトナムの4大金融機関の一つであるBIDVの紹介(1957年設立、総資産280億米ドル、JBICと1998年から提携開始、日本のメガバンク、特に日本の地方銀行とは20以上の覚書締結など)があり、今後、2015年のASEANの経済統合に向けた企業活動が活発化する中、緊密化する日越経済において日越企業間の橋渡しで協力することで合意した。
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その後、ギエム・ヴー・カイ日越友好協会会長(元科学技術省副大臣)と面談した。武部会長よりヴー・カイ会長に対し、東亜総研の活動内容を紹介するとともにベトナムにおける協力を要請、ヴー・カイ会長からは喜んで協力したい旨意向が示され、旧交を温めた。
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午後には、ハロン湾周辺で不動産開発などを展開しているTuan Chau Groupのダオ・ホン・トゥエン会長と懇談した。武部会長より、4月17日に北海道の漁業組合長など約15名でハロン湾を訪問することに関する協力を要請した。トゥエン会長より、「当日はハロン湾案内と併せ、武部会長の慰労会として、船上での夕食会にぜひ招待させていただき、ベトナムの文化や歌を紹介したい」との発言があり、武部会長より感謝の意が伝えられた。トゥエン会長からは、4月のハロン湾来訪時に、ハロン湾周辺の養殖場などを案内したい旨の意向が示され、併せて、ベトナム北部からハロン湾における水産漁業の発展について、日本の経験による協力やアドバイスをいただきたいとの要望があり、協力を約束した。
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一行は22日(土)深夜ハノイを発ち、翌23日(日)朝成田に無事帰着した。